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ほうせきしょう
宝石商
小川 未明
「現代」1921(大正10)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,265 字 · 11 页
そのとき、彼は、かすかに、前方にあたって、ちらちらと燈火のひらめくのをながめたのであります。いままで、がっかりとして人心地のなかった彼は勇んで飛びあがりました。ああ、これこそ神さまのお助けだと思って、その火影をただ一つの頼りに、前へ前へと歩き出したのでありました。
宝石商は、やっとその燈火のさしてくるところにたどり着きました。それはみすぼらしい小舎でありました。中へ入って助けを乞いますと、小舎の中には、おばあさんと娘が二人きりで、いろりに火をたいて、そのそばで仕事をしていたのであります。
宝石商は、自分は旅のもので野原の中で道を迷ってしまって、やっとの思いでここまできたのであるが、一夜泊めてもらいたいと頼みました。
おばあさんと、娘は、それはお気の毒なことだといって、宝石商をいたわり、火をどんどんとたいて凍えた体を暖めてやり、また、おかゆなどを造って食べさしてくれました。
「私どもは貧乏で、お客さまにおきせする夜具もふとんもないのでございますが、せがれが猟師なもので、今夜は、どこか山の小舎で泊まりますから、どうぞそのふとんの中へ入ってお休みくださいまし。