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ほうせきしょう
宝石商
小川 未明
「現代」1921(大正10)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,265 字 · 11 页
」と、二人はしんせつに、なにからなにまで、およぶかぎり真心を尽くしてくれました。
宝石商は、このお礼になにをやったらいいだろうと思いました。彼は、自分の持っている宝石の一つを、この家のものに与えたなら、どんなに一家のものが幸福になろうと考えました。また、その宝石を金にしなくても、娘のくび飾りとしたら、どんなに美しく輝いて娘の心を喜ばせるであろうと思いました。
宝石商は、これよりほかにお礼のしかたはないと考えたのです。彼は、月が空の上でいったことを思い出しました。
「なんにしても命が助かったんだ。宝石の一つや二つに換えられない。」と、彼は思いながら、床の中に入ってから、包みを出して、おばあさんや、娘に気づかれないように、一つ一つ宝石を選り分けてながめたのです。
すると、さすがに珍しい宝石だけあって、赤・緑・青・紫に輝いて、どれがほかのものより劣るということなく、見とれずにはいられなかったのであります。
「南の国へさえ持ってゆけば、一つが幾百両にもなる品物ばかりだ。これをやるのは惜しい。こんなに高価なものをお礼にする必要はないのだ。どうせ、今度きた時分に、なにか持ってきてやれば、それで義理がすむのだ。