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じっけんしつのきおく

実験室の記憶

中谷 宇吉郎

「図解科学」朝日新聞社、1942(昭和17)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,440 字 · 13 页

青空文庫

両者の研究方法は、このように考えてみると、別にそう本質的には変っていない。生きものを相手にしていることは同様であって、ただその相手の性質が少し異なるだけである。

自然法則が生きものであるとすると、その生きものが棲む環境がそれぞれ個性をもってくるのは当然である。雑草のようなものでさえ、それが繁茂しているところを見ると、いかにもその所を得ているものである。

実験室のような無生物に記憶が残るといえば不思議であるが、実験室という生きものが記憶力をもつと考えれば、それは当然のことである。

実験室へはいってみると、その実験室が生きているか死んでいるかは、すぐわかる。それは掃除が行届いているかいなかとか、設備が完備しているかいないかということとは別問題である。

実験室の生命の話は、いかにも荒唐無稽な話のようであるが、この生命を感知し得る神経を育てることは、研究者の一つの躾として、案外大切なことのような気がする。