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きゃくぎらい
客ぎらい
谷崎 潤一郎
「文学の世界」1948(昭和23)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,162 字 · 14 页
尤も戦争から此方、昔のような料理を食べるにはその方面に特別顔の利く人に連れて行って貰い、しかも大金を投じなければならず、なか/\われ/\普通人には企て及ばない事情があるので、招く方では大いに恩恵を施してくれるつもりなのであろうし、またわれ/\を出しに使って自分達が滋養分を摂取しようと云う考えもあるのであろう。そう云えば近頃は、専らこの「滋養分を取らせる」と云うことを目的にした、不思議な取合せの料理が流行るようである。去年東京へ行った時、或る場末の料理屋へ招かれたら鮪の刺身が出て、ビフテキが出て、天ぷらが出て、カツレツが出たことがあった。また或る田舎の旅館では晩に鱧のちり鍋が驚くほど多量に出て、翌日は朝から肉のスキ焼が出た。場末や田舎だけかと思ったら、京都の街のまん中の旅館(?)などでもそう云う料理を食べさせられたことがあったが、日本料理とも中華料理とも洋食とも何とも分らない取合せで、つまりわれ/\を平素配給物ばかり食べている人種と見、こんな機会にうんと栄養を取らしてやりさえすればよいのだ、と云うような列べ方で、料理の作法も何も無視した、およそ人を馬鹿にした、さもしい料理なのである。