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かていそうぞうのじょうねつ

家庭創造の情熱

宮本 百合子

「女性生活」1941(昭和16)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,670 字 · 6 页

青空文庫

例を近くにとってみれば、一人の男、一人の女がそんなに入り組んだ諸要素をもって生れて来ていて、それでどうして、その要素の各方面にひっぱられてしまわないで、半歩なり一歩なり前進して来ているのだろうか。

結婚生活または家庭生活というものを、私たちはまだまだどこやら穴居人の洞めいたものに感じる蒙昧さがのこっていると思う。そこの内部は何か人目からかくされた場所で、そこにある丁度いい暖かさ、体にあった窪みを、ほかのものには相当堪え難い悪臭とともに、自分たちの巣の懐かしさとして愛着する、そういうところがありはしないだろうか。

家庭のくつろぎ、居心地よさというものを、その人のよさ、ねうち、生活への美しい意企を誰よりも深く理解しあった者同士が感じ合える、その味いとしないで謂わば手ばなしでめいめいの癖を出し合える場面として、ひとにも云えないことの舞台としてしまうところはないだろうか。

家庭の二十四時間にはその上に、どっさりの台所の用事もついて来る。洗濯盥の権利も主張される。それらは今日の私たちの生活の上で決して手綺麗にすまされ処理されることがらでなくなって来た。若い主婦はいかに明敏であろうとも、八百屋に足を運ぶ度数を減すことは出来なくなっている。