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みつりんそうじけん
密林荘事件
海野 十三
「宝石」1946(昭和21)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,151 字 · 5 页
と、柴谷は目をしばたたき「自殺の手段は、すぐ分りました。卓子の上に、飲みのこしのウィスキーの壜があり、その横に空になったコップがありましたが、ぷーんと強く杏仁の匂いがしていました。彼は青酸加里を用いたのです。もうちょっと僕が早く戻って来れば、こんなことを彼にさせずに済んだものを。全く残念でたまりません」
「よく分りました。で、その日、誰か来客がありましたか」
「いいえ、ありません。二日間というものは、誰も来なかったです」
「その死んだ熊井君は煙草をすいましたか」
「いや、彼は全く煙草をやりません」
「なるほど。それから、貴方が山荘へ戻られたとき、玄関の扉は空いていましたか、それとも閉っていましたか」
「ええと、たしかに閉っていました」
「部屋の窓はどうでしたか」
「部屋の窓も全部閉っていました」
「ああ、そうですか。そこで柴谷さん」と旗田警部はちょっと言葉を停め、彼にしずかな視線を送った。
「私は貴方から本当の話を伺いたいものです。今までの話には、嘘が交っていますね。さ、始めて下さい、熊井君を殺したいきさつを包まず……」
はて、柴谷の話のどこに嘘があったろうか。名警部旗田は、どの点を以て、柴谷の陳述に偽りを認めたろうか。