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てらだせんせいとぎんざ

寺田先生と銀座

中谷 宇吉郎

「銀座百店」1955(昭和30)年2月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,015 字 · 2 页

青空文庫

だいたい五十銭という値段は、大学前の洋食屋で、毎日食べるランチの、二日分である。それで先生が「どうです、諸君、メロンを食べてみませんか」といわれた時には、思わずドキッとした。

持ち出されたメロンなるものは、厚さ一糎くらいの薄緑の薄片である。今から考えてみれば、ごく普通のマスクメロンを十六人前くらいに切ったものであった。しかしこの初めて見るメロンは、外側が浅い鮮かな緑色で、それが内側の橙色にとけ込んでいる様子が、如何にも美しく、また高貴に見えた。

初めてではあるが、大体見当はつくので、内側からスプーンで削って食べ始めた。まくわ瓜の味を少し淡くしたようなものであったが、これがメロンの味かと思って注意して食べた。三分の二くらい行って、まだ軟い部分が大分残っていたが、こういう高貴なものは、そう下品に食べては悪いと思って止した。他の若い連中も皆そうした。

ところが先生は、ずっと皮に近いところまで、削りとって食べられた。そしてひょっと私たちの皿を見て「君たちは、メロンは嫌いですか」ときかれた。一同はあわてて「いいえ」といって、また残りのところを食べた。

(昭和三十年二月一日)