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てらだとらひこのついそう

寺田寅彦の追想

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦の追想」甲文社、1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,683 字 · 40 页

青空文庫

て、先生の頭は異常な活動を開始しようとしていた。この年の発表論文五篇、翌大正十五年に七篇、次の昭和二年が十一篇、昭和三年が二十六篇というふうに、驚異的な進展をみせて行こうとする、その準備が、この頃もちろん先生にも意識されずに、着々と出来ていたのであった。

外的条件も丁度そういう研究陣の展開に、豊かな支援をあたえる方向に向いてきた。この時代が来るまでの大学での二十年間の先生の研究生活は、あまり恵まれた状態にはなかった。『冬彦の語源』にも書いたように、先生は終始周囲に気兼ねばかりして、古ぼけた器械ばかり持ち出して「変な実験をやって途方もない理論をそれにくっつける」ような研究をしておられた。「今理研におられる先生方が大学で実験をしておられた頃は、電気なんかの新しい流行の実験をすると、すぐ蓄電池のパワーが足りなくなるし、器械を買ってもらうのも大変だったし、遠慮ばかりしているうちに、到頭物理の方まで、吉村冬彦になってしまった」のであった。しかしそれは先生の本当の希望ではなかった。事実先生が恩賜賞を受けられた研究「ラウエ映画の実験方法およびその説明に関する研究」