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しょうらいのにほん

将来の日本

徳富 蘇峰

04 将来の日本

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,399 字 · 240 页

青空文庫

しからばすなわち怪しむなかれ。民間に学士・事業家・率先者の少なきを怪しむなかれ。なんとなればたといこれらの人々にしてみずから民間に足をとどめんとするも、決してその驥足を伸ばすの余地は存せざるなり。すなわちわが民間の境遇は天下有為の人士を追うてことごとくこれを政府の囲範内に入らしめたり。吾人はまことに信ず。いやしくも民間の境遇にしてこれらの人々の位地をば政府の官吏と同等同地位に立たしむるの域に進まざるよりは、決してこれらの官途熱望者を一変して、民間の事業家となすあたわざるなりと。しかしてこの弊習もまた偶然にあらず。ただ実に封建時代の遺物なりとす。

眼を転じて現今の経済世界を観察すればいまだかつて独立独行、政治社会の牽制を超脱してその純然たる経済的の事実なるものを見ず。たとえば日本銀行の貨幣市場における、日本鉄道会社の鉄道事業における、日本郵船会社の航海事業における、嶄然として頭角を顕わすがごとしといえども要するにこれみな政府の余力により、政府の余光を仮りてみずから豪なりとなすにすぎず。その他二十年間わが邦人の耳目に赫々たる土木築造のごとき、採鉱のごとき、あるいは農工商の改良のごとき、これみな明治政府の事業にあらざるはなし。