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じんじょういちよう

尋常一様

北大路 魯山人

「独歩」1953(昭和28)年

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,562 字 · 4 页

青空文庫

そうでなかったら、あんなこねまわした質問をするはずがない。さっきの客も、また、その客を訪ねて行く客も、間違わぬようにと思って、わたしは親切に玄関と書いてあげた。

樹木でも、日陰に植えて育つものを、日向に植えたり、砂地を好む木を赤土に植えたりしては可哀そうである。それと同じように、料理も、焼けばいちばんおいしいものを、煮てみたり、刺身にすればいい持ち味のものを焼いたりしてはいないだろうか。わたしは先ほど客に、食うために作ることだ、と返事をしたが、食うためにということは、馬や牛が食うためではないはずだ。手のこみ入ったものほどいい料理だと思ってはいないか。高価なものほど、上等だと思っていないか。わたしのいいたいことは、たくさんある。わたしの話すことは、それこそほんの料理の玄関にすぎないかもしれない。だが、諸君、先生を訪うなら、堂々と玄関より訪れたまえ。そして、無事に玄関を通してもらえたら、すなわち諸君の足で廊下を通って主人に会うて、諸君自身の口でしゃべりたまえ。わたしのこの本は、たとえ玄関より書き得なくとも、玄関をどうぞおあがりくださいと招じあげられたら、諸君は諸君の目で見、耳で聞き、舌で味わいたまえ。