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ちいさなくさとたいよう

小さな草と太陽

小川 未明

「赤い鳥」赤い鳥社、1920(大正9)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,414 字 · 5 页

青空文庫

垣根の内側に、小さな一本の草が芽を出しました。ちょうど、そのときは、春の初めのころでありました。いろいろの花が、日にまし、つぼみがふくらんできて、咲きかけていた時分であります。

垣根の際は、長い冬の間は、ほとんど毎朝のように霜柱が立って、そこの地は凍っていました。寒い、寒い天気の日などは、朝から晩まで、その霜柱が解けずに、ちょうど六方石のように、また塩の結晶したように、美しく光っていることがありました。そのそばに生えている青木の葉が黒ずんで、やはり霜柱のために傷んで葉はだらりと垂れて、力なく下を向いているのでありました。

けれど、春になりますと、いつしか霜柱が立たなくなりました。そして、一時は、ふくれあがって、痛々しそうに見えた土までが、しっとり湿っておちついていました。元気のなかった、憂欝な青木の葉も青い空をながめるように、頭をもたげました。赤い実までがいきいきして、ちょうど、さんごの珠のように、つやつやしく輝いて見えたのです。

そのころのことでありました。垣根の内側に、小さな一本の草が芽を出しました。草は、この世に生まれたけれど、まだ時節が早かったものか、寒くて、寒くて、毎日震えていなければなりませんでした。