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こせがれのつり
小伜の釣り
佐藤 垢石
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,702 字 · 4 页
私は『自分の子供の時と同じようだ』と、考えてほんとうに微笑ましかった。
家内は『勉強をそっちのけにして置いて、鮒ばかり釣っていちゃ困る』と言って、私に叱るように言うのであった。
近所にも、子供の仲間がいる。その子供の親達が川辺で自然に親しんでいるのを見て、口やかましく叱るのを見た。けれど私は家内に、
『人間は、未開な遠い祖先の時代から釣りや猟で生活してきたのだ。それが、潜在意識となって今の人間にも残っている。子供が、魚を釣ったり昆虫を捕らえたりして喜ぶのは、その潜在意識を偽らず飾らずかたどるのであるから、はたでたしなめるのは、子供の天性をまげるようなものだ』
と、いったふうな意味のことを語って、小伜のただ一つの楽しみを妨げさせなかったのである。
少し大きくなると、薮から切ってきた竹では満足しなくなった。糸も、縫糸では面白くない、と私に言う。安い竿を買ってやり、糸もテグスを与えるようになった。
ある秋のはじめ、村の地先の利根川へ流れ込む備前堀という小川の流れ口へ、小伜を連れて行ったことがあった。備前堀の流れ口へは、秋がくると毎年よく肥った大きなうぐいが数多く遡ってくるのである。