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しょうもんだいだいもんだい

小問題大問題

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,957 字 · 23 页

青空文庫

何処にいたって同じことさ」

「君の説に従って踏み留まろう」

「当り前さ。僕のように頭から命じられたのとは違う」

「昨日から随分迷ったが、もう動かないぞ」

と津島君は決心がついた。

爾来十有余年、津島君はもう津島さんだ。君呼ばりをするものは社長以外に二三人しかいない。庶務課長から支店長を経過する面倒もなく、そのまゝジリ/\と根を張って、今は押しも押されず、平重役の班に列している。妙に廻り合せ好く上役が逐年パタリ/\殪れたので後の出世が速かった。曽谷君の理論が実現した次第だけれど、本人は死んでしまったから何にもならない。津島さん独り巧いことをした。家庭に於ても男の子が三人とも大学を卒業し、女の子も一人片付いてもう一人は目下縁談中である。出でては平なりと雖も重役、乗るに自動車あり、入っては細君の丸髷が小さくなった代りに家屋敷が大きくなって子孫繁昌和気靄々、子爵病も疾うの昔に忘れてしまった。一杯やっても晏如として、決して愚痴を零さないのみならず、

「諸君に処世の秘訣を伝授しようか? それは不平を言わないことである。不満足という怪物はこれを口から外へ出すと自他ともに不愉快を感ずる。