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しょうけい

小景

宮本 百合子

ふるき市街の回想

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,323 字 · 15 页

青空文庫

じろりと見渡す。何処も彼処も、彼には一向面白可笑しくもないラムプスタンドばかり並んでいるのを認めると、忽ち、「なあんだ!」と云う表情を、日にやけた小癪な反り鼻のまわりに浮べる。

もう一遍、さも育ちきった若者らしく、じろりと私に流眄をくれ、かたりと岡持をゆすりあげ、頓着かまいのない様子で又歩き出す。三尺をとっぽさきに結んだ小さい腰がだぶだぶの靴を引ずる努力で動く拍子に、歌い出した鼻唄が、私の耳に入って来る。

私は、思わず微笑する。

「小僧さん。ただ見たばかりじゃあ勿論詰らないさ。一寸、あの青珠の下った、雲の天蓋のような色をしたスタンドを真中にして絵を画いて見給え。中に灯がついたらどんな明りがさすだろう。繞りに置いてある花や、男のひと、女の人の顔にどんな影がつくだろう。――夏の夜のようかな。それとも、暖炉でポコポコ石炭が燃える冬や、積った雪に似合わしいか? そう思って見るから、実は私も飽きないのさ。」

心の中で愉しい独りごとを呟きながら、もう姿も見えない小僧の跡をたどって、私もそろそろもと来た方に還り始める。――

それにしても、このような空想的遠征を、旧銀座通りの白昼にしたのは、私ばかりであったろうか。