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こむらたんさい

小村淡彩

宮本 百合子

「女性」1926(大正15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,488 字 · 23 页

青空文庫

て嬉しゅうございます。――それにしてもお立ちでは……さ、どうぞ、こちらに一寸おかけなすっていただきましょう」

いしは、縁側に座蒲団を出した。駐在は、ぎごちない様子で座蒲団の端に腰を卸した。物音で、せきも起きて来た。彼女は、怯えたように、しおたれて立っているろくと厳しい駐在とを見較べた。彼女は囁きでいしに訊いた。

「どうしたんです、おろくさん」

いしは、大きな声で不平そうに答えた。

「さあ、それが私にもまだ分らないのさ」

駐在は、せきを検視するように見ながら尋ねた。

「お前この女と一緒に寝ているのかいつも」

「ええ」

「一緒に寝ながら、脱け出すのが分らなかったのか」

彼の艶々した血色の好い顔が、このとき意地わるいように見えた。彼は、内心一種の亢奮を感じていた。一体、有名な寺院などのあるところに限って風紀がわるい。自分をこの村に廻された以上、万一法規に触れるような現場でも見つけたら、大いに手腕を振う覚悟であった。何の気なく、黎明の空気を吸いながら散歩をしていると、××寺の杉叢のところから女が出て来た。謂わば出来心で訊くと小松屋の女中であった。行った先、用向きを尋ねても云えない。