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こばやしひでおとび
小林秀雄と美
中谷 宇吉郎
「小林秀雄全集月報第五号」新潮社、1956(昭和31)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,137 字 · 7 页
ときには、二、三分も見ないで、すぐ「これはつまらない絵ですね」ということもある。主人の方が慌てて「それでも、これは昭憲皇太后さまのお手許にあったもので、間違いのないものなのですが……」というような弁解をする。「そうですか。それでも、絵はつまらないものです」と、落着きはらったものである。
小林秀雄の絵の批評は、たいていの場合、きわめて簡単明瞭である。「美しいね」と「つまらないものです」との二種類しかない。小学校の生徒のような口のきき方である。いつか、ピカソの絵の話が出たときに、「ああいう絵はどうもわからない」と言ったら、「あれはつまらないものです。わからないなどと皆が言うからいけないので、つまらないもんなんです」とたしなめられた。
どうも口のきき方がよくないのである。「よい」と「つまらない」との代りに、「好き」と「嫌い」という言葉を使っておけば、まだ無難なのであろう。そうしておけば、ピカソの礼讃者たちに、憎まれる度合も少なくなる。自分の気に入らないものは、何でも「つまらない」というのは、独裁者流で、非民主的である。
今日のような民主主義の世の中になると、芸術の世界でも、大衆性ということを、重視しなければならない。