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こいわいのいっか

小祝の一家

宮本 百合子

「文芸」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,193 字 · 31 页

青空文庫

「いや。……やろうか?」

と云った。

「いいえ、いい」

二人ながら小柄な体へ掻巻をかぶった夫婦はまた黙りこみかけたが、今度は乙女が、

「――祖父ちゃん、本当にミツ子こと小包にして送ってよこすかしんないね」

長い眉毛をつり上げたような表情で云い、不安そうに荒れている自分の唇をなめた。

「ふむ……」

「祖父ちゃん……――何すっかしんないよ」

「…………」

テーブルの上に、塵紙のような紙に灰墨で乱暴に書いた貞之助の手紙があった。年よりならきッと書きそうな冒頭の文句も何もなしで、いきなり、度々手紙をやったがいつ金を送ってよこすつもりかと書き出し、東京で貴様はどんな偉い運動をやっているか知らんが、こっちでは一家五人が飢え死にしかけている。総領息子の貴様はどうしてくれる。金をよこさないのなら、手足まといのミツ子を小包にしてでも送りかえす。そのつもりでいれ! かすれたり、そうかと思うとにじんだり、貞之助の頑固に毛ばだった眉毛を思い出させる不揃いの文字で罵倒しているのであった。小祝勉殿と書いてある封筒の下のところに、ひどい種油の汚点がついて、それがなかみまで透っている。

故郷のA市で、貞之助はここ数年間、毎朝納豆の呼び売りをしていた。