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しょうせつしゅう「せいにょにんぞう」こうき

小説集「聖女人像」後記

豊島 与志雄

「聖女人像」光文社、1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,673 字 · 4 页

青空文庫

そうすることによって、芸術的な濡いと余韻とを作品に保たせたかったのである。結果から見ると、小説よりは詩に近いものとなった。

詩に近いものとなったのは、他方、作者たる私の性格にも依るし、且つは作の主題にも依る。終戦後、何等かの踏み切りをなそうとしている人々、決意と跳躍とを身内に感じている人々、そういう人物を私は各方面に探求した。随って、彼等の気息は、現在にあるよりも寧ろ多く将来に通っている。そこに一種の詩が生れてくる。

だが、彼等は未だ真に踏み切ってはいない。それが私には不満なのである。終戦直後では、踏み切ろうとしてるだけで足りた。然し現在では、踏み切ってしまっていなければならない。この故に私は、特別な題材のものでない限り、もう近代説話ものを止めようと思っている。近代説話の領域から離れて、新たな創作方法を試みようと思っている。

小説は要するに人間像を描くことに在る。この人間像は、肉体ばかりでなく、思想感情意志などをも含めた立像を意味する。ところで、人間性そのものには変化ないとしても、新たな時代には、原子力時代には、人間像が変革するであろう。この変革した人間像を描くには、十九世記的な小説作法ではいろいろな苦渋がある。