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こさかいふぼくしスケッチ
小酒井不木氏スケッチ
国枝 史郎
「新青年」1926(大正15)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,809 字 · 12 页
(博士よ、書生をお置きなさいまし)玄関の正面は二階へ上る階段、玄関の右手は直ぐ書斎で、私は書斎へ通ろう。広さ六畳の洋風書斎、壁に篏め込まれた巨大な書棚。それへ掛けられた深紅の垂布、他に巨大な二個の書棚、尚この他に廻転書架、窓に向かって大ぶりのデスク。――銀行の重役の用いそうな、前脚に引出のあるデスクである。デスクの上の雑然たることよ! 併し主人公の頭脳さえ、整理してあれば可いでは無いか。室の片隅にラジオを据えた卓、それと平行した室の隅に身長の高い置戸棚、そこに載せてある器といえば、青年時代の氏の写真(尤も今でも青年ではあるが)小さい可愛らしい七宝焼の花瓶、ひどく旨くない油絵の小品、等、々、々と云うようなもの。……戸棚の前に深張りの革椅子。他に籐椅子が二脚ある。そうして最う二つ廻転椅子。――氏常用の椅子である。室の中央に石炭ストーブ、それから最う一つ瓦斯ストーブ、書棚には沢山な和洋の書籍。
さて氏の風貌をスケッチしよう。中肉中身長血色よく、病身などとは思われない、衣裳の嗜好は地味の黒色。丹前姿の時もある。広い額だということは、氏が博士だという事に由って、非常に合理的に解釈出来よう。