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ことり
小鳥
宮本 百合子
「明星」第6号、1922(大正11)年4月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,264 字 · 7 页
ひょい、ひょいと、下の枝に来る。餌を拾おうというのであろう。うす黄色い鶏の雛子は、入口の直ぐ前、餌から一尺も此方に立たされているのである。
何心なく下りて来た彼女は、一寸の所で、雛に心付いたらしい。そこに止り、しきりに頭を動かし、右、左に移って覗いている。――腰をおろし、さて、思い切って飛ぼうという姿をするが、また不安心で、頭を動かして下を見る。(小鳥は、物を見ようとすると、眼玉を動かさず、頭部全体を傾け、うつむけて物に向く。)頻りにそうやっているうちに、どうも敢て近づく気がしないのだろう、ちょん、ちょんと、また元の枝まで戻ってしまった。それでも気になるらしく、低い声で、喉を鳴らしているのである。
今度は、同じ鳥の雄が来た。やはり同じ径路を繰り返す。
可哀そうになって、私は雛の剥製を籠から出してしまった。そしてもう見えない処に置き、また様子を窺った。
余程空腹であったと見え、戻った雌が再び下りて来る。実に注意し、気の毒なほど頭を動かし、そろそろ逃げる用心をしながら枝から枝へと伝って来るのである。先刻の黄色い変なものがいないことだけは分ったのだろう、元よりは低く降りた。