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しょうねんとうみ

少年と海

加能 作次郎

「赤い鳥」1920(大正9)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,808 字 · 10 页

青空文庫

「どうして助けたのかね?」と為吉は尋ねました。

「あの時は、大変な暴風でな。」

「矢張り南東風だったね?」

「あ、大南東風だった。」

「えい。」と為吉は熱心になって、「その時も矢張り白山が見えていただろうね?」

「そんなことは覚えていないけれど、恐ろしい大浪が立って、浜の石垣がみんな壊れてしもうた。」

「よう、そんな時に助けに行けたね、――死んだものがおったかね?」

「何でも十四五人乗りの大きな帆前船だったが、二人ばかりどうしても行方が分らなかった。何しろお前、あの小が崎の端の暗礁へ乗り上げたので、――それで村中の漁夫がその大暴風の中に船を下して助けに行ったのだが、あんな恐ろしいことは俺ァ覚えてからなかった。」

為吉は眼を光らして聞いていました。父は為吉の問に応じて、その難破船の乗組員を救助した時の壮烈な、そして物凄い光景を思い出し話して聞かせました。その時為吉の父親は、二十七八の血気盛りの勇敢な漁夫で、ある漁船の船頭をしていたのでした。そして県庁から、人の生命を助けた効によって、褒状を貰いました。その褒状は仏壇の抽出の奥の方にしまい込んで置いて、もう忘れて了っていたのでした。