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しょうねんのし
少年の死
豊島 与志雄
「新潮」1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,400 字 · 27 页
何かつらいことがありはしないかい。あったらそうお云い、私が悪いようにはしないから。でももう暫く辛抱するんだね。そのうちにどうにかしてあげるよ。うちの親方もお前には見込があると云っているんだからね。」
庄吉はそう云われたことが嬉しいよりも寧ろ何となく恐ろしく思えたのであった。自分の未来のことを考えると、触れてならないものに触れたような恐しさが後で萠した。そして大留のうちにも種々な術策が方々で行なわれていることが漠然と彼の頭に入って、それが一層彼の心を臆病ならしめた。
或日の夕方大留の仕事場から帰って来て台所口の方に廻ろうとすると、その日先に帰った金さんがおせいと何やら声高に話している声がして、庄吉という言葉がふと彼の耳に入った。
「大留さんが見込がありそうだというんだ。」
「そんなことが子供のうちから分るもんかね。」
「いや兎に角器用なんだ。今までに一度だって怪我もしなかったじゃねえか。」
「何をいうんだよ、お前さんは。怪我でもされて高い薬代を取られた日にはかなわないじゃないかね。」
「まあそれもそうだが、大抵の者あ怪我の一二度はするものさ。……兎に角大留さんは多少見所がありそうだから年季に上げたらどうだというんだ。