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しょうねんのし
少年の死
豊島 与志雄
「新潮」1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,400 字 · 27 页
「何を愚図々々していたんだい。こんなに遅くまで。」と小母さんは怒鳴った。
「親方のうちに用があったから。」
「どうだか分るものかね。大方活動の前にでもぼんやり立っていたんだろう。仕様のない餓鬼だね。早く御飯でもおあがりよ。」
庄吉は一人で食いちらされた餉台に向った。
その晩彼は封筒はりをしながら、死んだ父のことを思い出したりした。然し別にそれも懐しいものでもなかった。ともするとしっかりした大留の顔がそれを消して彼の心に浮んできた。
毎朝庄吉は八時頃弁当を持って大留の仕事場に通った。そして夕方家に帰って来た。小父さんと一緒の時も、又そうでない時もあった。そして幾らかの心附けの金が彼の為に小父さんの手に渡された。
庄吉は夕方一人で少し早めに帰るのが一番嬉しかった。一寸廻り道をして活動の看板を見に行くこともあった。また華やかな商店の窓を覗いてまわることもあった。然し彼が一番嬉しかったのは家の向うのみよちゃんに逢うことであった。漸くお垂髪にしたばかりの愛くるしい顔が彼の頭にはっきり刻まれていた。
仕事場に通わなかった或日庄吉は、堅吉や繁やまた近所の子供等が集まってみよちゃんの護謨毬で遊んでいるのを、側に立って見ていたことがあった。