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びょうぶはたたまれた
屏風はたたまれた
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页
一
二
一
吉村弥十郎はその手紙を三度もらって、三度とも読むとすぐに捨てた。ちょうど北島との縁談がまとまったところなので、誰かのいたずらだろうと思ったからである。差出人の名はただ「ゆき」とだけで、内容はいつもきまっていた。
――自分はさる家の乳母であるが、自分のそだてた嬢さまがあなたをみそめ、おもいこがれるあまり病気のようになった。そばにいて見るに見かね、思いきってこういうぶしつけな手紙をさしあげる。どうかいちど嬢さまに逢ってやってもらいたい、むすめ一人のいのちが助かるのである。自分は来てくださるものと信じて、嬢さまといっしょに待っている。堺町の中村座の茶屋で「ゆき」と云ってくださればわかるようにしてある。
そして、どうかぜひ来てくれ、こんどこそ来てくれるようにと、くり返し書いてあった。どこのなに者ともわからないが、よその娘にみそめられる、などという機会があったとは思えない。考えてみても、弥十郎にはそんな記憶はないし、書いてあることもあまりに古風であり、型にはまりすぎていた。「ふん」と弥十郎は呟いた、「ひまなやつがいるものだ」
二
吉村は九百五十石あまりの中老で、父の伊与二郎は五十八歳になり、槍組と鉄炮組を預かっていた。