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びょうぶはたたまれた
屏風はたたまれた
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页
四
弥十郎は門をはいり、植込のあいだを玄関のほうへ歩いてゆきながら、胸がときめくように感じて狼狽した。
四
弥十郎と千夜とは、「川西」で七たび逢った。二人はそこで初めて肌を触れあったのだが、彼にとってはまったく新しい経験であり、心のうえでも躯のうえでも、深く大きく、自分が変えられるのを弥十郎は感じた。初めてのとき、千夜がひじょうな苦痛を訴えたこと、また苦痛の証明を見たことで、彼は殆んど動顛した。それはあの「式」などでは決してなかったことであるし、その他のすべてがまるで違うものであった。そこには快楽らしいものは少しもなかったし、彼自身それを欲する気持もなかった。千夜がひたむきに求めるので、なかばやむなく応ずるのだが、また苦痛を与えるのではないかという、危惧と懸念のほうがいつもつよかった。千夜も快楽を感じていないことは慥かであった。また、そのようにはげしく求めるのも、肉躰的な快楽を求めるのではなく、触れあうことによって、彼をじかに感じたいためのように思えた。
ここでも同じように雨戸を閉め、一双の屏風をまわし、隣り座敷にはゆきという婦人がいた。逢っている時間は短く、刻限になるとゆきが隣りから声をかける。