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びょうぶはたたまれた
屏風はたたまれた
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页
するともう待ったなしで、すぐに支度をし、別れなければならないのであった。
「しょせん奥さまにはなれないのですものね」と千夜は熱い囁きで彼に迫った、「一生の思い出になるのですから、どうぞお好きなようになすって」
そのあとで千夜はいつも泣いた。
「どうして結婚できないのだ」と或るとき弥十郎が訊いた、「こうなったら結婚するのが当然ではないか」
千夜は泣くばかりであった。
「わけを聞かせてくれ」と彼はべつのときに云った、「どうして結婚できないんだ、まさか身分などにこだわっているのではないだろう、ほかに約束した者でもあるのか」
千夜はやはり泣きながら首を振るだけであった。このほか、彼女のことを知ろうとして、弥十郎はずいぶん言葉をつくしたが、千夜は「なにも訊いてくれるな」と云うばかりで、どんな質問にも答えなかった。どうやらそれがゆきを憚っているようすなので、彼は二人だけで逢いたいと云いだした。
「ええ、いまに」と千夜は頼りなげに答えた、「いまにおりをみまして」
七たびめに、彼は千夜の肩をつかみ、暴あらしく揺りたてながら「いつ二人だけで逢えるか」と迫った。閉じこめられている千夜の心を揺りさまそうとでもするように、力まかせに揺りたてながら、「いつだ、いつだ」