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びょうぶはたたまれた
屏風はたたまれた
山本 周五郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1957(昭和32)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,953 字 · 24 页
そのとき、まるでその機会をみまもってでもいたかのように、四度めの手紙が彼の手に届いた。
――三度も手紙をさしあげ、願掛けをするおもいで待ったが、三度とも来てはいただけなかった。
という書きだしで、むりな願いと、ぶしつけな点をくり返し詫びたうえ、自分が逢わせてさしあげると約束してから、嬢さまのようすは眼にみえて元気になった。もしこれが逢えないとなったら、こんどこそ本当に病気になってしまうだろう。どうかいちどだけでいいから来て頂きたい、自分のこの一心がとおるようにと祈っている。そういう意味のことがめんめんと書いてあった。
「いたずらにしては念がいりすぎている」弥十郎は呟いた、「とにかく、いちどゆくだけいってみるか」場所はやはり中村座の茶屋である。弥十郎はなお幾らか躊躇したが、指定された日になると、ようやく心がきまり、学友に招かれたからと断わって家を出た。
中村座の茶屋へ着いたのは午後三時ころであった。「ゆき」といってたずねると、年増の女中が出て来て、どうぞこちらへと、すぐに案内した。小屋のほうでは開幕ちゅうとみえ、低い鳴物が聞えるほかはしんとしており、茶屋の廊下にもあまり人の姿はみえなかった。