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やまのこんじゃく

山の今昔

木暮 理太郎

「山岳講座」1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,554 字 · 42 页

青空文庫

この僅か一、二の例から古にまで遡って一律に取り扱うことは、大胆な推断のようであるが、暗黙の間に事想の一脈相通ずるものがあることは誰しも認めるであろう。

実際古代に在りて、道もなき高山に登る困難を考えたならば、かかる労力奉仕者なしに十数日乃至数十日に亙る登山は、如何に不惜身命の行苦に心身を鍛錬した僧侶と雖も、不可能ではなかったかと想われる。勿論この人々は何か事が起れば、主を打ち棄てて真先に逃げ帰ったかも知れないが、又恐る恐る昨日の処に引き返して其安泰を知ると共に、以前に倍して尊信と労力とを捧げることを惜まなかったであろう。唯事実を伝えた記録が残っていないので、其真相を知るに由ないのは是非もない。世に伝うる縁起なるものは、ひたすら我仏をのみ尊くせんが為に後人に依りて作為されたものであるから、多くは信を置き難いのである。但し二、三の例外あることは認めてよろしかろう。

是等の部落の人々の中でも、特に登山と密接の関係あったものは猟師である。山の生物を殺すことを業とする彼等の間に行われた信仰のことは別とし、山にかけては何人も及ばない知識の所有主で、豪胆でもあり※捷でもあったところから、山の開祖達は最も多く其助力を受けたことであろう。