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やまのてのこ
山の手の子
水上 滝太郎
「三田文学」1911(明治44)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,551 字 · 31 页
とささやく気配だった。かさかさ草の中を潜っていた子供の顔は人馴れぬ獣のように疑い深い眼つきで一様に私を仰ぎ見た。
その翌日。もう長屋の子と友達になったような気がして、いつもよりも勇んで私は崖に立って待っていた。やがてがやがや列を作ってやって来た子供たちも私の姿を見て怪しまなかった。
「坊ちゃん、お遊びな」
と軽く節をつけて昨日私を見つけた子が馴れ馴れしく呼んだ。私は何と答えていいのかわからなかった。「町っ子と遊んではいけません」と言った乳母の言葉を想い起して何か大きな悪いことをしてしまったように心を痛めた。それでも、
「坊ちゃんおいでよ」
と気軽に呼ぶ子供に誘われて、つい一言二言は口返えしをするようになったが悪戯子も、さすがに高い崖を攀じ登って来ることは出来ないので大きな声で呼び交すよりしかたがなかった。
こんな日が続いたある日、崖上の私を初めて発見した魚屋の金ちゃんは表門から町へ出て来いという知恵を私に与えた。しばらくは不安心に思い迷ったが遊びたい一心から産婆や看護婦にまじって乳母も女中たちも産所に足を運んでいる最中を私の小さな姿は黒門を忍び出たのである。