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やまのてのこ

山の手の子

水上 滝太郎

「三田文学」1911(明治44)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,551 字 · 31 页

青空文庫

油絵で見るような天使が大きな白鳥と遊んでいるありとあらゆる美しい花鳥を集めた異国を想像してどんなに懐かしみ焦がれたろう。実際あり来たりの独楽、凧、太鼓、そんな物に飽きたお屋敷の子は珍物好きの心から烈しい異国趣味に陥って何でも上等舶来と言われなければ喜ばなかった。長崎屋の筋向うの玩具屋の、私はいい花客だった。洋刀、喇叭、鉄砲を肩に、腰にした坊ちゃんの勇ましい姿を坂下の子らはどんなに羨ましく妬ましく見送ったろう。いつだったか父母が旅中お祖母様とお留守居の御褒美に西洋木馬を買っていただいたのもその家であった。白斑の大きな木馬の鞍の上に小さい主人が、両足を蹈ん張って跨がると、白い房々した鬣を動かして馬は前後に揺れるのだった。

「マア、玩具にまで何両という品が出来るのですかねえ、今時の子供は幸福ですねえ」

とお祖母様はニコニコして見ていらっしゃった。玩具屋の側を次第に下って行くと坂の下には絵双紙屋があった。この店には千代紙を買いに行く、私の姉のお河童さんの姿もしばしば見えた。芳年の三十六怪選の勇ましくも物恐ろしい妖怪変化の絵や、三枚続きの武者絵に、乳母や女中に手を曳かれた坊ちゃんの足は幾度もその前で動かなくなった。