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やまぶきのはな

山吹の花

豊島 与志雄

「群像」1953(昭和28)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,727 字 · 22 页

青空文庫

通いの勤めだったが、用の多い日は泊ってくれた。始終こまめに動き廻って、ちょっとでも手をあけてることがきらいだった。用事がなくなると、自分から進んで戸棚の中を掃除したり、食器を整理したり、庭の草をむしったり、若い女中にせっついて衣類の繕い物を出させたりした。そしてよく病人の世話をした。綾子もFさんに好感を持っていて、その打明け話に笑い声を立てた。

Fさんの家には、畳職人である息子の夫婦と、小さな子供が四人いた。Fさんは金がたまると、その孫たちに物を買ってやるのが楽しみだった。息子の働きで一家の生計は立っていたので、Fさんが外に出て働くのも、自分の老後の小遣と孫たちへの贈物とのためだった。

「家の嫁ときたら、わたしにお湯銭をくれるのさえ惜しがるんですよ。」

そんなことを言ってFさんは笑った。

「それに、言うことがいいじゃありませんか。わたしがこうして家にいるからこそ、おばあちゃんは外に働きに行けるんじゃないか、ですってさ。家にいないとすれば、どこにいるつもりなんでしょうね。気が立ってくると、糞ったればばあ、とぬかすんですよ。だからわたしは言い返してやります。