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やまもとゆうぞうしのきょうち
山本有三氏の境地
宮本 百合子
「文芸」1937(昭和12)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,155 字 · 32 页
人及び芸術家としての幸福とは、果してどういうところに在るものであろうか。特に、「真理を愛し真実の生活をいとなむ」ことと「社会の中枢にたって立派に働く」こととの間に、益々かくも巨大なる矛盾があらわれている今日に於て。――山本有三氏の道義がこれまで放牧されている地域にあっては、歴史の推移につれて、従来の種類の草だけをいかに気を入れて氏の芸術論に云われているようにこちらのものにしても、カルシウムの欠乏は何となし顕著に感じられて来ている。それは、既に「女の一生」の中で允子が息子のためになすべきことと思ってしたことと、息子がなすべきことと認めたこととの間に、社会的価値の評価を示すことが不可能であったことにも現われて来ているのである。芸術論の中に云われているとおり、芸術はあるものを写すものではなくって、あるべきものを描き出すのであるとすれば、氏の芸術が中産階級の生活を描いた時、その思想や感情が現在あるもののみを写す限度に止るようなことは、決して作者としての自己に許し得ないところであろうと思う。
氏をして書かしめない外部の力があるとすれば、それは「嬰児殺し」を書いたこの作者、感想「何処に訴えん」