轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やまつばき

山椿

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页

青空文庫

主馬はこう考えたとき、妻が喪に服しているということに気づき、続いてそれが既に明けている筈ではないかと思った。日を繰ってみた、慥かにもう数日前に明けていた。主馬は眼の覚めたような顔で妻を見た。

「今日は十二日だったね、――もう涅槃会か、これで寒さもおしまいだね」

尖った神経が酔わない酒のためにあらぬほうへ歪んでゆく、主馬は努めてそれを鎮めながら、十二時を聞くまで寝床の中で輾転していた。それから思い切ったように起きて妻の部屋へはいっていった。

襖の明く音ではね起きたきぬは、恐怖の眼でこっちを見ながら、夜具をすりぬけ、行燈の掛布を取ろうとした。主馬は鋭く「きぬ」と云いながら襖際に立止った、きぬは伸ばした手を下げ、追詰められた獣のように身を縮めた。――あの夜と同じ姿である、微塵も変ってはいない、母の喪というのが口実だったことは慥かだ、主馬は前へ出た。するときぬは身震いをしながら救いを求めるような声で云った。

「どうぞ今夜だけ、――今夜だけお待ちあそばして……」

そしてけんめいな哀願の眼で主馬を見上げた。なんという眼だったろう、とつぜん、主馬は自分が汚らわしく堕落した人間のように思われ、一種の吐き気に似た胸苦しさに襲われながら、逃げるようにその部屋を出て、うしろ手に襖を閉めた。