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やまつばき
山椿
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页
、毒を消すには至極だから」
医者が帰るとすぐ、必要なところへ使者を出し、主馬は独りで、また妻の居間へとはいっていった。
両家の親族が駆けつけたとき、死躰はもう納棺されてあった。そして順庵老の厳しい戒しめで、実父の須藤宗右衛門でさえ死顔を見ることが許されなかった。――余り突然であり、夢のようだ。通夜の席ではそのことが繰り返され、主馬に同情が集まった。彼は石のように黙って、終夜きちんと棺の側に坐っていた。
その翌日の朝、葬礼が行われた。初七日が済むと主馬は勤めに出はじめた。御殿改築の責任者だから、長く休む訳にはいかなかったのである。大沼から手伝いに来ていた従妹は、相談の結果そのまま留まることになり、荷物も運び戻された。家の中は少しずつ平常の姿に返っていった、暗い不幸の匂いは消えないにしても、あるじの多忙な明け昏れにつれて、生活はしぜんとおちつきをとり戻した、――こうして日が経っていった。
三十五日の法要があった翌日、主馬は納戸奉行の栗原和助をその役所に訪ねた。栗原は主馬より三つ年長である、彼は主馬の話を聞いて審しさに眼をすぼめた。
「榎本良三郎というのはいるよ、然しそれはよしたほうがいいね、あれはだめだ、とても使えるような人間じゃないよ」