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やまつばき
山椿
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1948(昭和23)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,911 字 · 32 页
五
「いや使ってみたいんだ、大概なところは知っているが、少し考えることがあるんでね」
「私はすすめないな、無能な許りでなく猜い、人に仕事を押付けておいて自分がしたように拵える、むやみに中傷や誹謗で人を傷つける、不平やごたごたの起こるもとだよ」
「だが人間は使いようがあるからね、とにかく手続きをするから頼むよ」
こういう話があって間もなく、榎本良三郎は作事奉行へ勤め替えになった。二十四という年よりずっと老けてみえる、色の冴えない、眼の濁った、憂鬱にふてたような顔つきだ、華奢な躯にも拘らず、どこかしら脂肪でたるんだような感じがあり、きみの悪いほど白く、長い指をしていた。――主馬は彼を見たとき、憐憫を感ずるほど不快におそわれ、眼をそむけた。
五
主馬はその日、下城するとき良三郎を誘って、京町の「小倉」という料亭へあがった。良三郎は不安そうに手を揉んだり、ふてぶてしい冷笑をうかべたりして、ひどくおちつかない居心地の悪いようすだった。
「今日は二人だけで飲もうと思うんだが、そのまえに少し話がある、――まじめな話だからその積りで聞いて呉れ」
主馬は平静な眼で相手を見た。