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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

大山は、その頭がますます、熱くなっていくのを感じた。堪らなくなって、立ち上って、押上窓を上げて、支っかい棒をかった。

と、一坪に足らない鶏小屋、風呂場、その下の便所、その下に流れる天龍川の灰色の濁流が目に入った。

満目、濃緑と白と灰色であった。対岸の山は緑、河原の石は白、流れは灰色だった。それ等の見倦きた風景に眺め入って、頭の中に熱く煮えくりかえる、得体の知れぬ想いを追っ払おうとしているとき、また一つの思いが、意地悪く頭の中に忍び込んだ。

それは植付時の事だった。

ほとんど全体が滝から成っていると言ってもいい、谿流から水を引いて、苗床を拵らえるために、山間農民の忙しい最中であった。

飯場の便所が、オーバーしそうになったので、そいつを三尺ばかり低くなった、川堤の方へ移転したのだった。

そこへ、その便所の角を廻って田へ水を引くための溝を作りに、四人の農夫が来た。そして四人は、何かヒソヒソと重大な相談でもするように首を集めていた。

話が煩雑になるので、端折るが、それは、「溝を作るのに、便所の台柱が三寸か四寸、邪魔になる。その邪魔になる部分は、飯場の土地とは所有者が違う。