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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

したがって、これは、他人の土地の不当占用という事になる。で、『便所を移転してもらわねばならぬ』」ということになったのであった。

そこで、農民たちは、その便所の最も近くに住んでいる小林という、飯場頭に、その言い分を持ち出したのであった。

「柱が邪魔だったら切りましょう」

一方は、土方で日本中を股にかけて歩き廻っているから、話は早くつけたい方である。

一方は、土地に生えついたまま、一生涯動かぬ樹のような農民である。気の長いこと無類である。その上、何かしら、彼等はドヤドヤッと、無遠慮に乗りこんで来て、大胆に奔放に自然に手を入れて、そいつを変形させ、人工的な力学的な美を創造する、土方というものに、一種の反感に似た気持を抱いていたのである。

強烈な刺戟は、都会人にとっては悦であり、山に住む人々にとっては苦痛であった。

大山が食事するために、丁場から飯場の方へ降りて行くと、田と飯場との間の狭い畦道で、小林が大きな声を出していた。

話を聞くと、農夫たちが、「柱が邪魔なら切りましょう」と言うのに対して、はっきりした返答をしないし、その気分が、どうも切るだけでは満足でないらしい。