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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

ことにこの恋愛競争に、大衆的な娯楽的要素を与え、レビュー化したのは、この年ちょうど、徴兵検査の年齢に達した、林田という小男であった。

五尺には、どうも些と足らないだろう、と思われるほど、林田は短かかった。

「おい林田、検査場に行くと、入口んとこに縄が張ってあるんだ。五尺の高さんとこにな。引っかかる位の奴は別の口から、中へ入れるが、お前は、その縄の下を通らされるぜ。そして一等お終いに、司令官が言うぜ、『今日縄の下を、縄につかえずに通った者は、大きな体格の良い女房をもらえ』ってね」

「ニキミ、シバラ」(馬鹿野郎)

と、林田は朝鮮語で言い返すのだった。この小男の愛嬌者は、朝鮮の労働者と、ことに親しかった。ともすれば、日本人労働者と、朝鮮人労働者は、言葉の自由な交換ができないで、反感は持たないまでも、親密になるという場合は、余り多いとは言えなかった。が、この小男は、特別であった。というのは、この小男が最初土方になったのは、朝鮮人の飯場においてであったからであった。

が、ただそれだけの理由でもなく、この小男は極く無邪気な、人に悪意を持たない性質から、誰からも憎まれる、という事がなかった。