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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

まで行かねばならなかった。

チブスの流行った時などは、一日に二つ位そこから、濃い煙が上がった。その煙がまた、風のないために未練気に、いつまでも谿谷に立ち罩めて、川向いの飯場までも、いやな臭いを嗅がねばならなかった。

まだ寒い頃の事であったが、前の日、小さな棺を、極く少人数で送って来て焼いていたが、その翌日、朝早くから、その小さな棺の母親らしいのが来て、夕方まで、ほとんど、その穴の中に入りっ切りだったことがあった。

川向いの飯場でも、それに気がついて、「どうしたのであろう」と、みんな気になって時々見やった。もういないかと思うと、穴の中からものうそうに頭を上げたりするのだった。多分、幼くして逝った子の、どんな小さな骨をも拾い残すまいとしたのであろう。そして、冬の早い日没で、もう姿の見えなくなるまで、帰って行くのはこちらからは見届け得なかった。

緑屋の飲料水の問題は、その日の夕方から雨になったので、一切の水喧嘩の例に洩れずあっさり解決がついた。

が、今度は、緑屋の家屋そのものと、中にいる人間とが、「安全でないかもしれない」という状態になった。

誰も、こんなことが持ち上がろうとは、思いもかけない事であった。