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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

という事が分った時、うれしい、とか、ありがたい、とかいう感じはなかったね。そんな利害得失じゃあない、別な感情だね、何と言うかね、崩れた山に、こう礼を言いたいような気持だったね。『どうも済まなかった』とでもね」

と、昂奮と激動の後で、心の底に涙でも溜めているように、小林は静かに語った。

大山は、なぜともなしに、涙ぐんでその話を聞いていた。静かな風情であり、心持ちであった。

まるで、そこには、たった今まで、何事もなかったような、寂しい静けさがあった。

日常の、生活の重しからいや応なしに、焙り出されるような考えと、この山崩れの直後に、人を囚にするような考えとは、何というはげしい径庭のある事だろう。

山は一二分で、または十秒か二十秒かで片がついてしまった。が、坑夫たちも世話焼きもみんな二分、十分、三十分、その崩壊現場を立ち去り得ないで、転落して、山の一部から独立した石となったのの上へ、腰を下ろして断層に眺め入っていた。

何という見事な断層であろう。それはまるで自然石の巨大な墓石を思わせるように、辷っこい肌を、三角形にほとんど垂直に立てていた。そして、その表面には、白粉でも塗ったように、白い細かい土を薄くつけているのであった。