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やまごしのあみだぞうのがいん

山越しの阿弥陀像の画因

折口 信夫

「八雲 第三輯」1944(昭和19)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,125 字 · 30 页

青空文庫

はじめは、此書き物の脇役になる滋賀津彦に絡んだ部分が、日本の「死者の書」見たようなところがあるので、これへ、聯想を誘う為に、「穆天子伝」の一部を書き出しに添えて出した。そうして表題を少しひねってつけて見た。こうすると、倭・漢・洋の死者の書の趣きが重って来る様で、自分だけには、気がよかったのである。

そうする事が亦、何とも知れぬかの昔の人の夢を私に見せた古い故人の為の罪障消滅の営みにもあたり、供養にもなるという様な気がしていたのである。書いている内の相当な時間、その間に一つも、心に浮ばなんだ事で、出来上って後、段々ありありと思い出されて来た色々の事。まるで、精神分析に関聯した事のようでもあるが、潜在した知識を扱うのだから、其とは別だろう。が元々、覚めていて、こんな白日夢を濫書するのは、ある感情が潜在しているからだ、と言われれば、相当病心理研究の材料になるかもしれぬ。が、私のするのは、其とは、違うつもりである。もっとしかつめらしい顔をして、仔細らしい事を言おうとするのである。だから、書かぬ先から、余計な事だと言われそうな気おくれがする。

まず第一に、私の心の上の重ね写真は、大した問題にするがものはない。