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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
誰かが気が変になったような悲鳴をあげました。なるほどモーニングの大きい穴の向うには、背中の方のモーニングの裏地が見えるばかりで中はガラン洞に見えました。こんな不思議な生物があるのでしょうか。
「あれは洋服だけが動いているのじゃないだろうか」
一人の警官が、いくら雨霰と飛んでゆく機関銃の弾丸を喰らわせてもビクとも手応えがないのに呆れてしまって、こんなことを叫びました。しかしその証明は、立ち処につきました。というのは、破れモーニングの怪物が、こんどはノソノソと、機関銃隊の方へ動き出したのです。
ビュン、ビュン、ビュン、ビュン。
異様な音響を耳にしたかと思うと、そのモーニングはサッと走り出しました。呀ッと一同が首をすくめる遑もあらばこそ、機関銃がパッと空中に跳ねあがり、天井に穴をあけると、どこかに見えなくなりました。
「これはいかん」
と思う暇もなく、一同の向う脛は、いやッというほどひどい力で払われてしまいました。
「うわーッ」
警部と私とが助かったばかりで、あとは皆将棋だおしです。もう起きあがれません。警官隊は全滅です。
モーニングの怪物はと見てあれば、フワフワと開け放された玄関に出てゆきました。