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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
どんどん飛ばしてゆくほどに、とうとう小田原の町を外れて、線路と並行になりました。生ぐさい草の香が鼻をうちます。
「どうだ、見えないか」と警部は大童です。
「さアまだ見えませんが……呀ッ呀ッ、居ました、居ましたッ」
「どこだ、どこだッ」
「いま探照灯をそっちへ廻しますから……」
運転台のやや高いところに取りつけてあった探照灯がピカリと首を動かすと、なるほど線路上にフワフワと跟めきながら東の方へ走っている二つの白い人影がクッキリ浮かび出ました。一人の方は剣を吊っているらしく、ときどきピカピカと鞘らしいものが閃きます。
「居た、居た、あれだッ」と兄が叫びました。
「追跡隊はどうしたのだ。――うん、あすこの線路下に跼っている一隊に尋ねてみよう」
警部さんは汗みどろになっての指揮です。
「オーイ、どうして追駆けないのだ。元気を出せ、元気を――」
「いま最後の一戦をやるところです。見ていて下さい。駅の方から機関車隊が出動しますから……」
「ナニ、機関車隊だって……」
その言葉が終るか終らぬ裡に、ピピーッという警笛が駅の方から聞えました。オヤと思う間もなく、こっちに驀進してきた一台の電気機関車、――と思ったが一台ではないのでした。