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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

その材料について、予は左記の如き分子式を想像するが、この中には、地球にない元素が四つも交っているので、もしルナ・アミーバーが渡来したときには、面白い研究材料が出来ることであろう、云々」

ルナ・アミーバーという、透明で、流動性の生物があることは、博士の論文を見て始めて知ったのです。これは恐らく、博士夫妻の外に知った人間は、兄が最初だったことでしょう。兄は勇躍して、その白毛のようなものをポケットから取り出しました。これは私が曾て、壊れた窓硝子の光った縁から採取したものでした。あの怪物が室内から飛び出すときに、鋭い硝子の刃状になったところで、切開したものと思います。

兄は理学士ですから、スペクトル分析はお手のものです。博士の研究室のスペトロスコープを使って、その白毛みたいなものを、真空容器の中で熱し、吸収スペクトルを測定してみました。すると、どうでしょう。その結果が、博士の論文に掲げられた分子式と、ピッタリ一致したのです。

「ああ、ルナ・アミーバーだッ。ルナ・アミーバーの襲来だッ」

兄は、気が変になったように、その室の中をグルグル廻って歩いたのです。

「どうしたのです、帆村さん」