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あらしのよる
嵐の夜
小川 未明
「宗教界」1906(明治39)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,980 字 · 6 页
かねちゃんはいつしか、お爺さんに連れられてちょうど夢心地で、歩いていますと、いつのまにやら海辺へ来たと見えて、波の音がどどんどどんと岸を打つのが暗のうちに聞かれました。
かねちゃんは、お爺さんの後について余程歩いたかと思う時分に、だんだんお爺さんの歩みが早くなったようで、かねちゃんは一生懸命に追い付こうと思って駆け出しましたけれどだんだん遠く遠くなって、提燈の火が小さくなるばかりであります。もはや堪えきれなくなって、泣き出そうとしました時、お爺さんの身の辺から鬼火のようなものが、とろとろと燃え上りましたかと思うと、もはや消えて真暗やみになって、身体がだるくなって、とうとう眠てしまいました。
あくる日の朝、目をぱっちりあけて見ますと、破れた船の中に自分は眠ていて、まりも枕頭でごろごろごろついています。その傍に父さんも母さんも無事で、自分の方を見て、今お起きかと目元で笑っていなさる。真蒼な海には、白帆の影が見えて、薔薇色の朝日が見事に昇って、沖の方が輝いています。