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あらし

嵐

島崎 藤村

島崎藤村『嵐』。同一底本的分册已合并为一书。收入:嵐、分配。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,007 字 · 108 页

青空文庫

嵐

子供らは古い時計のかかった茶の間に集まって、そこにある柱のそばへ各自の背丈を比べに行った。次郎の背の高くなったのにも驚く。家じゅうで、いちばん高い、あの子の頭はもう一寸四分ぐらいで鴨居にまで届きそうに見える。毎年の暮れに、郷里のほうから年取りに上京して、その時だけ私たちと一緒になる太郎よりも、次郎のほうが背はずっと高くなった。

茶の間の柱のそばは狭い廊下づたいに、玄関や台所への通い口になっていて、そこへ身長を計りに行くものは一人ずつその柱を背にして立たせられた。そんなに背延びしてはずるいと言い出すものがありもっと頭を平らにしてなどと言うものがあって、家じゅうのものがみんなで大騒ぎしながら、だれが何分延びたというしるしを鉛筆で柱の上に記しつけて置いた。だれの戯れから始まったともなく、もう幾つとなく細い線が引かれて、その一つ一つには頭文字だけをローマ字であらわして置くような、そんないたずらもしてある。

「だれだい、この線は。」

と聞いてみると、末子のがあり、下女のお徳のがある。いつぞや遠く満州の果てから家をあげて帰国した親戚の女の子の背丈までもそこに残っている。