轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かわなみ
川波
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第五十一号」1956(昭和31)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,022 字 · 18 页
「いやに、はっきりいうじゃないか」
「これでもおれは密偵だからね。戦争のはじまる時期くらい、見当がつくだろうさ」
だいぶ底が入っているらしく、なにか曖昧なことをいいながら、だるそうに窓際の長椅子の上に長くなった。
豊川は本家の会社で若さと熱情のかわらぬ信義をつくして精進したおかげで、財界理論派の若手のホープとして、重役陣へのゴール・インが約束されていたが、昭和十二年の秋、突然、企画院の経済科学局へ入って戦時資材の調査にヨーロッパへ派遣され、間もなく巴里駐在員になった。
軍部との抱合を、できるかぎり回避するというのが、五大財閥の伝統的な方策だったが、それを裏切ってまで、なんのつもりで総力戦を支持する新秩序に積極性を示そうとするのかと、真意を知らぬ財界の若手連中を呆れさせたものだが、豊川がそれとなく告白したところでは、実情は、だいたいつぎのようなものだった。
日本は昭和十二年の秋から参謀本部の総力戦五カ年計画にもとづいて、広汎な軍事資材の購入にかかっていた。銅の輸入は七割増、鉄鉱石は十割増、銑鉄と屑鉄は二十五割増、高オクタン価の航空用ガソリン生産のための「四エチール鉛」