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かわなみ

川波

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第五十一号」1956(昭和31)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,022 字 · 18 页

青空文庫

にいたっては、厖大な量を輸入しようという肚であった。その他、プラスチック(飛行機の耐破ガラス)、爆薬製のフェノール、アセトン、トルオール、戦略的軽金属のマグネシウム、現在、生産高七千六百万円程度の工作機械製造を、十六年には二億円に拡充する飛躍的な目標をたて、あらゆる方面へ原料輸入の触手を伸ばしていた。戦争に役立つものなら、油脂、ヒマ、砂鉄鉱、黄麻、棉実の果てまで、無限に取込もうという勢いで、材料処理のための技術官、輸送主任、会計経理官、国際法に精通した法務官、商事法律顧問などのブロックが匿名の購入班長に統轄され、日本人、混血児、中近東人のバイヤーなどがヨーロッパ中を飛びまわり、障壁と妨害の裏を潜って資材蒐集に狂奔している。

豊川治兵衛の身分は、公称は経済科学局の研究員だが、実体は、財界にも財閥にも資本家にも因縁を持たぬ、総力戦研究所直属の秘密仲買人、同時に、陸軍参謀本部特殊勤務要員という名の経済スパイなので、こんどのヨーロッパ行の仕事は、パルプとバーターで瑞典へ行くはずの銑鉄の仕向先を、日本に切換えるための下工作と、アフリカ仏領チュニス燐鉱の輸出超過分を、「フランコ・インダス」