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じゅんさじしょく

巡査辞職

夢野 久作

「新青年」1935(昭和10)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页

青空文庫

とまで強弁した。

谷郷村では草川巡査の評判が一ペンに引っくり返ってしまった。

犯人は居ないものと決めてしまっていた村の人々は、殆んど一人残らず一知に同情して、草川巡査を憎むようになった。タッタ一人深良屋敷に取残されていたマユミを乙束区長が引取って世話をするようになってからは一層、村民の憎しみが、草川巡査の上に深くなって行ったところへ、町からたまたま来た刑事までもが……これは草川巡査と鶴木検事の一代の大縮尻かも知れない……などと言葉を濁して行ったりしたので、村の連中は最早、一知の無罪を信じ切って疑わないようになって来た。しまいには……草川巡査はズット以前から巡廻の途中で、いつも深良屋敷へ寄道をする事にきめていた。そうしてマユミがタッタ一人で留守をしているのを見ると、無理往生をさせる事にきめていたのだ。この間、区長さんがその事を問うてみたら、マユミさんが泣いて合点合点していた……などと真しやかに云い触らす者さえ出て来た。

そんな噂に取巻かれた草川巡査は、前にも増して痩せ衰えて行った。何度行っても得るところの無い深良屋敷の空家の周囲をグルグルと巡廻したり、肥料小舎の入口にボンヤリと突立って、天井裏を見上げていたりした。