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こうだんし
巷談師
「別冊文藝春秋 第一七号」1950(昭和25)年8月3日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,894 字 · 22 页
このハガキは文藝春秋新社気付でいったん東京へ送られ、転送されて、おそくついたから、謎の発見がおくれたのである。
貴殿の「野坂中尉と中西伍長」に感激したから、他の論文の出版社を至急教えてくれ、というハガキであった。ユイショある流儀を感じさせる達筆だ。我々から見て、文字に二つの区別がある。文学を愛好する者の筆蹟と、そうでないものの二つである。弟子入りや共産党の手紙は中途半端で分類以前の筆蹟であるが、つまり彼らは筆蹟的にも未成品であることを示している。
このときのハガキは、そうでない筆蹟の中でも特にそうでない達筆で、年齢は四十以上であることを示していた。つまり実務家の中でも一かどの老練家という風格を語っていたのである。
折から選挙たけなわの時であるから、私はふと気がついた。差出人は誰かの選挙事務長かも知れない、と。とにかく応援演説のネタ本用に火急の必要にせまられているものと睨んだのである。「野坂中尉と中西伍長」が政治家の演説に利用されていることを、かねてきき及んでいたから、サテハ、と看破したのである。
応援弁士というものは、たいがいアルバイトで、にわかにタネ本を物色して、三十日間打ってまわるものであるが、「野坂中尉と中西伍長」